チョット変な乗り越し精算

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新宿行きの特急『あずさ』自由席での出来事です。

後数分で八王子到着ですが、自由席内は通勤電車にも似た混雑で立錐の余地もありません。

八王子まで無事検札に引っ掛らなければ、特急料金はチャラ。

(蒸し風呂の様な社内に何時間もずっと立っているのですから特急料金も糞も無いと思いつつ、同じ思いの方々も少なくなかったと思います)

そこを、客を客とも思わず掻き分け掻き分け検札係りの爺さんがやってくるではありませんか。

あと一息で成功という所で人々の夢を打ち砕くドミノ倒し完成寸前の破壊者そのものです。水戸肛門の助さんに言わせれば『全くフテ~野郎だ』。

いよいよ車掌は、小生一人前の紳士然とした初老の方まで迫ってきました。

この紳士『はいはい、甲府から八王子まで精算したいのですが、生憎と細かいのを切らしてまして、申し訳無いですが大きいのでも良いですか』と切り出しました。

車掌は、『XXXX円ね』と、ぶっきらぼうに精算金額を告げます。

そこでこの紳士は、いきなり胸の内ポケットからさっと硬貨を1枚取り出して『じゃ~すみませんが、これで、おつりは千円札でお願いします』と切り返します。

よく見ると10万円硬貨ではないですか。

車掌は、既につり銭の千円札を数枚出す準備をしていましたので、一瞬困惑した表情を見せましたが、すぐに横柄な態度にとってかわって『あんた、他に細かいのないの』

紳士がすかさずこたえます『生憎これしか無いんですよ、私も困ってましてね、ですから、ここで何とか千円札にして頂きたいんですが。

そうそう、これ内の家内なんですが、これも精算したいんだが、これも10万円硬貨しかないんですよ。似た者夫婦っていいますか、いや~丁度良かった、家内の分もくずしてもらえますよね』

これには、さすがの車掌も冷静さを失って『ちょっとちょっと、忙しいんだから、20万円も両替できないよ。少しはあるんでしょ細かいの』

紳士動じず『いや~裸になって検査して頂いても仕方ないんですが、ないんですよ本当に』

と押し問答をしている内に『間もなく八王子に到着します。お忘れ物無い様にお支度願います』と社内放送が流れ、車内が一気にざわつき始めました。

紳士はすかさず『私共、八王子で降りるんですよ。丁度良かった、それでは、八王子で精算します。どうも、足止めしてしまってすみませんでした。』

これには、車掌も二の句が告げられず黙ってしまいました。小生達は、粛々と棚の荷物をおろし下車準備をしながら、紳士の後ろにいた幸運をかみしめていました。

これで、何人の人が助かったのでしょうか。心なしか周りにもほっとした安堵の空気があふれていました。

さて、小生は横浜線に乗り換え横浜で下車したのですが、先程の紳士ご夫妻を偶然改札口でお見受けしました。

夫婦仲良く定期券で出られている模様です。そして改札口のすぐそばの崎陽軒の売店でシュウマイ弁当2個を千円冊2枚で購入されました。

う~ん見事、小生もいつかは、あんな紳士になりたいものだ、諺にもありますが、『大は小をかねる』と。


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